気候の変化、からだの変化
この6月はめまい・頭痛・吐き気などに悩まされる患者さんが非常に多くいらっしゃいました。
私(院長)自身、先週後半には3日ほど頭痛が続きました。
肩も凝るし背中は重だるく張り、頭には全身の血液が昇ってくるような膨張した感じ。そこにまるで「孫悟空の輪」を嵌められたかのような締め付け感があり、とても不快な数日間でした。
よく「季節の変わり目」には体調を崩しやすいとか、自律神経の不調が現れやすいなどと言われますが、まさに梅雨明けのタイミングにやられた感じでした。
梅雨時のあのジメジメ感、肌寒い日が続いたかと思えば真夏のような暑さになったり、南の方では台風が発生して強風が吹いたりと、気温や湿度の急激な変化、気圧の変動にからだが揺さぶられた結果でしょう。
個人的な経験則ですが……自分の場合は、まだ遠く(沖縄や九州地方)に台風などの低気圧が来ているときに不調を感じやすいです。低気圧が関東に移動して来る数日間の間に何とか身体が順応し、実際に「台風の目」のなかにいるような時はかえって楽になり、また台風が北上して去っていくときはやや不調、というパターンが多いでしょうか。
「歩く天気予報」のような方が時々いらっしゃいますね。そこまでではありませんが、比較的精度は高い(?)ように思います。
頭痛に限らず、例えば雨が近づくと関節や古傷が痛む、喘息が悪化するといった身体の変化は広く知られています。
めまいの発生についても、耳の奥で平衡感覚をつかさどる「内耳」が気圧の変動を感知するセンサーの働きをしており、めまいや頭痛の発生や悪化に関係していることがわかっているそうです。
「自律神経の働き」でも触れましたが、身体には血圧や呼吸、消化器の働き、体温調節など「緊張と緩み」のバランスをとる機能が備わっています。
むくみ予防のサポートタイツや医療用の弾性ストッキングなどには、「○○hPa(ヘクトパスカル)」という圧力の単位が表示されていることがありますね。
高気圧のもとでは、まるでこのようなサポートタイツを着用した時のように身体が外側から圧迫される状態となります。筋肉が圧迫されると血管が圧迫されて血圧は上昇します。
また、気圧の高い状態では空気中の酸素分圧も高いため、呼吸によって取り込まれる血液中の酸素濃度が増加し、筋肉や脳により多くの酸素が届けられます。そうすると身体活動・精神活動とも活発になります。つまり気圧が高めの時は身体は「交感神経」優位の状態になると言えます。
逆に、一日の終わりにサポートタイツやボディスーツを脱いで締め付けが楽になるとほっとしますね。
外からの締め付けが減少する、つまり低気圧の状態です。この時、筋肉は緩み血圧も下がり、身体の隅々まで運ばれる血液は減少します。
普段でも緊張から解放されて「副交感神経」が優位の状態となる夜間には脈拍・血圧・呼吸数が下がり体温も低下して、リラックスして睡眠に入り、身体を休める時間になります。
しかし日中にこのリラックスモードの身体に鞭打って活動するのは大変です。気圧が低い状態では酸素分圧も低くなっているため、呼吸により取り込まれる酸素量も減少します。組織はいわば酸欠状態や栄養不足となってしまい、それが倦怠感や気持ちの落ちこみにつながることもありえます。
アスリートのなかには、心肺機能を高めることを目的に、あえて気圧の低い高地でトレーニングする方もいらっしゃいますね。きちんと計画されたプログラムのもと、低気圧、低酸素の状態で負荷をかけることで心臓、肺機能を鍛えるのでしょうが、TVで時折目にする高地トレーニングの様子はとても過酷に見えます。
さて、そのような気圧の高低に加えて、気温が上下すれば身体は発汗を促して体温を下げたり逆に熱を産生したりします。これも自律神経系が目まぐるしく交感神経⇔副交感神経のバランスを調整しなくてはならず、身体にとってかなりの負担となります。
梅雨が明けたとは言え、この数日は雨風が強まったり気温が下がったりと(でもまだ暑いですが)気候の変動が大きい時期です。
そして迫りくる夏バテの季節……。
東洋医学、漢方医学では「養生」の考え方を大切にしています。
次の機会に譲りますが、頭痛の話題から「自然界で起こっていることは人間の身体のなかでも起こっている」という「整体観」についても書こうかと思っていました。
風が吹き荒れるときは、体の中も嵐のような変化にさらされる、湿度が高いときは身体のなかも「湿」にやられやすい、といった考え方があります。
季節に合わせた「養生」や漢方薬の選び方など、折に触れてお伝えしたいと思います。
「整体観」自然のなかに人がいて、人のなかに自然がある