メニュー

自律神経の働き

日頃、「自律神経失調症」という病名や「自律神経症状」といった言葉を目にする機会がおありかもしれませんね。
ところでそもそも、「自律神経」とは何かについてご存じでしょうか。

 

人間の身体を動かしたり感覚を司る神経には、いくつかの種類があります。
「運動神経」は脳や脊髄からの指令を筋肉に伝えて動かすための神経ですから、自分の意志で身体を動かすことに深く関わっています。
これに対して「自律神経」はその名の通り、身体「自ら」がその働きを「律する」神経です。

 

では何を「自ら」「律して」いるのか?

それは、心臓や血管の動き・呼吸・消化の働き・体温調節など、いずれも人間が生きていくには欠かせない機能の数々です。
血圧を自分で自在にコントロールしたり、消化管の動きを止めたり、汗を出したり止めたりして体温を操ることはできませんね。

これらの基本的には自分の意思では自由にできない機能を、私たち起きている間も寝ている間も全く無意識のうちにコントロールしてくれているのが自律神経です。

このように身体をコントロールする神経を「自律神経」とひとまとめに称していますが、実際は身体の働きをコントロールするにあたり「交感神経」「副交感神経」の2種類の神経が働いています。

それぞれ身体を

① 緊張させる(交感神経)
② リラックスさせる(副交感神経) 

方向に働きます。
つまり、この交感神経と副交感神経は真逆の機能を持ちながら、まるでシーソーのように互いにバランスを取りつつ身体の機能を司っています。

 

-------------------------------------------------------------------------

それぞれの機能を少し詳しくみていきましょう。

 

交感神経 → 体を緊張させる

このとき、身体を以下のように変化させます:

- 呼吸:浅く早くなる

- 心臓:速く打つ

- 血管:収縮する(血圧は上がる)

- 皮膚:皮膚血管が収縮し、毛孔も収縮、毛が逆立つ(いわゆる「鳥肌が立つ」状態)

- 精神面:緊張が強まり、不安になる(自らへ危険を知らせる信号)

 

副交感神経 → 体をリラックスさせる(緩める)

このとき、身体を以下のように変化させます:

- 呼吸:深くゆったりした呼吸となる

- 心臓:ゆっくり打つ

- 血管:弛緩する(血圧は下がる)

- 消化:消化液の分泌や吸収、排泄などの一連の動きを進める

- 精神面:ぐっすり眠れるなど、緊張が緩んだ状態になる

---------------------------------------------------------------------------

 

これらの交感神経/副交感神経の働きを一番わかりやすくイメージできるのが、「fight or flight 」(戦うか逃げるか)反応です。
動物が敵に襲われそうになったとき、敵と戦うかそれとも逃げるか、いずれにしても瞬時に身体を動かせるように身構えるでしょう。

それは動物にとってまさに緊張の極み、交感神経が極限まで働いている状態です。

眼は爛爛と光り(瞳孔が開く)、総毛立ち(皮膚の変化)、呼吸は浅く速くなり(酸素をたくさん取り込めるように)、心臓は早鐘のように打ち(動悸)、多くの血管は収縮して(血圧が上がり)、筋肉へは優先的に血液が供給されて緊張が高まり、いつでも瞬発的に動けるようにスタンバイする状態となります。動物では「手に汗を握る」とは言わないかもしれませんが、手足や脇、額などからの部分的な発汗も交感神経が刺激されたときの反応です。
また、そのような緊急事態にゆっくり食事や排泄なんてしている暇はなく、消化管の運動は抑えられています。

 こうして瞬時に戦うか逃げるかできる状態に身体を持っていくわけですが、この「fight or flight 」(戦うか逃げるか)に「flight」(固まる)が付け加えられて「fight or flight or freeze」反応と言われることもあります。
恐怖で身体がすくんでしまう状態ですね。

 

さて、この真逆に動物が心底リラックスしている状態が(野生動物ではそのなかに必ずわずかな緊張もあるでしょうが)、敵に襲われる心配のない安全な環境にいるときや、そのような安心感のなか眠っているときです。
このとき、心臓はゆったりと規則的に脈打ち、血管は開いて血圧は下がり、筋肉はだらんと緩みます。このような時には消化管の働きが活発となり、食べ物を飲み込む、食道、胃、腸が順々に働いて食べ物を下へ下へと送る、胃液などの消化液を分泌して消化し、便として排泄するという一連の働きが行われます。

 

極限状況を除いては、完全に交感神経だけあるいは副交感神経だけが働くような状況はなく「その時々で、どちらかというとこちらの方が優位に働く」バランスで調整が働いています。
車に例えるとアクセルとブレーキのようなもので、アクセルを踏みっぱなしということもなければ、ずっとブレーキを踏んでいるということもなく、上手に切り替えながら目的の方向へ運転していくイメージです。

人間の場合、日中に仕事や運動など活動している時間帯には交感神経の方が優位、夜間は副交感神経が優位となりスムーズに睡眠に入れるようにシフトしています。

 

このバランスが崩れてしまった状態が「自律神経失調症」です。

自律神経失調症の項目へ続く)

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME