漢方薬について
当院では、心身の不調に対して漢方薬による治療も行っています。
院長は、女性外来に始まり一般の精神科診療においても、
「何となく不調」
「色々と検査しても原因がはっきりしないので、精神的なものではないかと言われた」
といった症状でお困りの患者さん方に積極的に漢方薬を用い、その有効性を実感してきました。
大学病院の東洋医学外来を担当していた時は、心療内科・精神科専門の漢方治療をしていたわけではなく、主に身体の不調にお困りでお見えになる患者さん方の治療を行っていました。
それでも不調の蔭にストレス要因が隠れていたり、精神的な症状も伴っている方がおられたりと、こころとからだの連関を意識させられることが多々ありました(→こころとからだ)。
女性では「冷え」から来る不調や月経・更年期関連の症状が問題となることがあり、抑うつ・イライラなどの精神症状と関連していることも少なくありません。
男性でも夏場の冷房や冷飲食が「冷え」につながったり、過労や睡眠不足、生活習慣などが体調不良を引き起こし、ひいては心身双方に影響を及ぼすことがあります。
精神的な症状が強い場合に漢方薬だけで対応することはありませんが、こころの不調に伴って起こるからだの症状に効果的な漢方薬は数多くあります。
からだの症状に対してはもちろんのこと、精神的な症状に対しても抗うつ薬や抗不安薬などの精神科の薬に加えて、もしくは単独で漢方薬を用いることができます。
身体の不調が緩和されてくると、精神面の症状の改善にもつながります。
漢方薬を処方する際は、「うつ病に対して抗うつ薬」「睡眠障害に対して睡眠薬」というような考え方ではなく、症状を来たすおおもとの不調がどこにあるのかに着目し、心身全体のバランスを調整していきます。
それぞれの体質や症状を見極めてより的確な漢方薬を選択できるように、必要に応じて漢方医学的な診察(四診)も行います。
なお、当院で処方する漢方薬は保険適応のあるエキス剤(顆粒状の薬)ですので、服用しやすく、続けやすくなっています。
漢方薬が効果的な身体の症状
疲れやすさ、食欲低下、自律神経症状(頭痛、めまい、ふらつき、のどの詰まった感じ、腹痛、下痢、体温調節の異常など)や女性の月経前症候群(PMS)、更年期症状など
漢方薬で対応できることのある精神的な症状
軽度の抑うつ、不安、イライラ、不眠など
当院で処方することのある漢方処方の例
- 半夏厚朴湯
- 抑肝散・抑肝散加陳皮半夏
- 酸棗仁湯
- 加味帰脾湯・帰脾湯
- 加味逍遙散
など、症状・体質に応じて処方を選択します
~ 漢方薬についてFAQより抜粋「心療内科・精神科でよく使われる漢方」~
Q.心療内科・精神科でよく使われる漢方薬にはどのようなものがありますか??
A.処方する機会の多い漢方処方の例:
憂うつ感や不安感、イライラ感など気分を主に改善する処方
- 抑肝散/抑肝散加陳皮半夏(よくかんさん/よくかんさんかちんぴはんげ)
- 香蘇散(こうそさん)
気分に加えて頭痛、耳鳴り、のぼせ、「喉のつまり感」や息苦しさ、
その他様々な身体症状(自律神経失調症状)を伴うとき
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 加味帰脾湯(かみきひとう)
疲労感が強いときなどに元気を補う処方
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
眠りの浅さや夢見の悪さを和らげる処方 →「睡眠薬について」にも記載あり
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
悲しさや不安感、情緒不安定さを軽減する処方
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
- 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)
上記の処方はあくまでも一例です。
便宜的に主なターゲットとする症状ごとに処方を分類しましたが、実際はいくつかの症状群にわたって効果を発揮する処方もあります。
(例えば不安感にも眠りにも効果を発揮する処方、元気をつけながら憂うつな気分を和らげる処方、など)
経過や症状、体質に加え、必要に応じて漢方医学的な診察(四診)にて処方を選択します。