現代女性のライフサイクルからみた更年期&老年期
前回お知らせした、
更年期&老年期どう過ごす?外部講座「ウィメンズレッスン」
こちらの講座をご紹介したのを機に、これまで女性医療関係のセミナーや勤務先の病院での勉強会などでお話ししてきた内容や、多くの更年期~老年期の女性の診療に携わるなかで感じたことをまとめてみました。
長くなりますが、最後までお読みいただければ嬉しいです。
女性が現在のように人生のなかで40年近く毎回月経を迎え、多くの女性が閉経後もなお数十年の人生を過ごすようになったのは、人間(日本人)の歴史の中ではつい最近のこと。
私達(40代院長)の曾祖母の世代では、閉経≒人生の終わり。
10代もしくは20代の早期までに結婚し、その後、人によってはほぼ途切れなく妊娠、出産を繰り返していたため閉経までの月経回数は少なく、女性ホルモンの変化に伴う月経前症候群のような症状も当然目立たず、閉経期には親の見送りも終え、子供達はとっくに成人して家を離れている、というような人生が「モデルコース」。
そんななか、たまたま健康寿命が60代、70代まであった人はまさに「余生を送る」。のんびり悠々自適に過ごせたかもしれません。
長寿命化が進んだことで、閉経後の長い期間を更年期&老年期として送るなか、親もかなり高齢まで存命するようになりました。
その介護負担が社会問題化してきたのは母親世代あたりから。
それでも専業主婦であれば、「一時期は介護に専念」という役割感を持った生き方へもさほど抵抗なくシフトできたのではないかと思われます。
私達の世代では、女性の高学歴化、高齢出産の増加などもあり、閉経期にはまだ子供が成人せず(思春期の真っただ中なんていうことも)、フルタイム勤務で定年まであと10年以上、その間に親や場合によっては祖父母の介護が始まる、などというケースがありえます。少子化によって、ひとりっ子もしくは少ないきょうだいで介護を担うことも少なくありません。
少子高齢化、社会構造があまりにも急激に変化し、女性の生き方もこの数世代で激変したことで、祖母、母親世代の生き方と今の女性のそれとはまったく異なります。
価値観を共有できない、母が娘のロールモデルとなりえないような世代間の断絶があることで、現代社会を生きる女性にとっては、手探りで人生を進めていくようなしんどさが付きまとうことも…。
結婚、出産、育児に関しては、母親世代から多少なりの経験の伝達や支援があるかもしれませんが(それでも価値観の違いからかえってストレスになることも)、更年期以降、老年期の送り方となるともう、「この時期にはこれ」という答えはないのです。
では同世代の女性同士で経験を共有しあって助け合っていけるかと言うと、それも今どきは色々と難しい面があります。
学童期から学生時代、社会人になってしばらくは「よーいドン」「みんな一緒」で過ごしても、その後の人生は多種多様。結婚する・しない、子供を持つ・持たない・持てない、「バリキャリ」・専業主婦・ワーキングマザーetc. 様々なコースに分かれます。各人各様の生き方を模索しているうちに、気づけば更年期、ということも多いのではないでしょうか。
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…というような話を、十数年前に女性医療を学び始めた頃、折に触れてレクチャーしてくださったのが元東京女子医科大学女性生涯健康センター所長・教授の加茂登志子先生です。そのような社会学的な視点が目新しく興味深かったのを覚えています。
その後、このような現代女性のライフサイクルについて自分でも理解を深めたり肉付けしたりしていくなかで、私自身もプレゼンテーションする機会を何度かいただきました。
アップデートのために厚労省の各種統計や白書を参照したり、「いまどきの女子は~」というような記事にアンテナを張ったりしていると、この十数年でも女性のキャリア、結婚、出産などへの志向がずいぶんと変遷していく様子に気づきます。
それでも、誰にでも更年期はやってきます。
更年期は人生の折り返し地点。女性ホルモンの急激な低下に伴う心身の不調が現れやすい時期であるのに加え、ライフステージのうえでも上述のようなストレス要因が重なりやすく、時に抑うつ的となる方もおられます。
婦人科からはホルモン療法や漢方薬、精神科・心療内科からは場合によっては抗うつ薬など、治療の選択肢は様々にありますが、それまで全力で走ってきた人は、更年期をきっかけに「省エネでいこう」「立ち止まって充電しながら」などと、今後のペース配分を考える時期かもしれません。
逆に、それまでの重荷を下ろして、これからやりたいことをやるわ!となる方もいらっしゃるかもしれませんね。
ちなみに更年期以降~老年期というのは、女性にとっては「そろそろ同窓会に顔を出し始める」時期なのですよね。それまでそれぞれに忙しくしていた女性たちが、子供が手を離れ、仕事は定年になり、「介護はまだまだ長丁場になりそうだけど、取り合えずいい施設が見つかったから…デイケアが使えるようになったから…。」etc. 久しぶりに同窓会に顔を出してみようかしら、となる方が少なくありません。
それまでは家庭の話、子供の話、仕事の話…話題が合わずに学生時代のような親しさとは程遠くなっていた同級生と、介護の話と自身の体調の話ではお互い分かり合えて意気投合、なんていうことも。
そういう意味では、更年期は負荷がかかりやすい時期ではありますが、それを乗り越え、様々なことを荷下ろしするタイミングとも言えますね。
そして、それまでの人生ではそれぞれの道に枝分かれしながら歩んできた女性たちが、人生の後半期に向けて、横のつながりを緩やかに再構築していくターニングポイントなのかもしれません。
それぞれの更年期&老年期、どう過ごす?
少しでもしのぎやすく、過ごしやすくなるように、女性のみなさんを応援したいと思っています。
そして、冷え症で片頭痛持ちで貧血で疲れやすい私自身の更年期はどうなるのか?何年後かにレポートすることになるのでしょうか??何とか健やかに乗り越えたいものです。
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