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今朝のあさイチ~うつ病と家事

[2018.10.31]

今朝、たまたまTVをつけていたらNHKの「あさイチ」でうつ病を特集していました。
途中から見始めたので、最初の方がどういう話題だったのかはわからなかったのですが……。

 

ちょうど見始めたときには、主婦の方のうつ病の症状や回復の兆候として、日常生活のなかでも特に料理などの家事にまつわる実例が紹介されていました。
なるほど、うつ病「あるある」だなと思いながら見ていました。

 

抑うつ状態の時でも比較的こなせる家事としては「洗濯」、逆に億劫で取り組めないのは「料理」ですね。

(もちろん、こなせる範囲には個人差があり、掃除洗濯料理全て困難、という病状もありえます。洗濯はできているから軽症、洗濯もままならないから重症かも、とか言うことではありません。家事の中でも段取りの違いなど家事の「質」の比較の話ですので、どうぞ誤解のないようにお願いします!)

 

洗濯は洗濯機が大部分をしてくれて、干す作業もある意味単調なのでこなしやすいのかもしれません。
ご家庭によっては乾燥まで機械がやってくれるとこともあるでしょう。

 

その点、料理は大変です。

献立を考える→買い物に行く→食材を選ぶ→下ごしらえをする→調理する→味付けする

 

この段取りのひとつひとつが、うつ病のときには障害されてしまいます。

 

①献立を考える:そもそも食欲が落ちているので、何を食べたいかすら思い浮かばない

②買い物に行く:意欲や行動力が落ちているので、買い物に行くという行為はかなり億劫、一歩踏み出すのが大変

③食材を選ぶ:思考力が落ちているので、作ろうする献立にどんな食材が必要か考えることができない、選ぶことができない

(「あさイチ」では、高齢の女性患者さんがうつ病の経過の中で、買い物に行った際に「どのトマトもあまり変わらないのに、どの箱を手に取っていいか決められずしばらく立ち尽くす」という場面が紹介されていました。まさにそのような状態ですね。)

④下ごしらえ:食材に応じて皮をむく、切る、など適切な方法を選ぶにも思考が止まりがち、更にあらゆる作業が億劫となり手が止まってしまう

⑤調理:④とも共通ですが、食材に応じて煮る、焼く、炒めるなど調理法や調理器具を選んでこなすのはかなり頭を働かせる作業なので大変です

⑥味付け:うつ病のために味覚が低下していることもありますし、食欲が落ちて「美味しい」と感じられない中でこれまでの味付けを再現するのは困難

 

当院で患者さんからのお話をうかがっていても、「自分ひとりだったらお弁当を買ってきて済ませるんだけど……家族がいるからそういうわけにもいかなくて」との前置きに始まり、「買ってきて焼くか炒めるかすればいいだけの料理しかしていません」とか、「本当に最低限です」などとおっしゃる方が多いです。

 

番組ではうつ病に対する薬物治療によって、患者さんが回復するにつれて以前のように美味しい料理を作れるようになる様子が紹介されていました。

それ以外にも、スタンダードな薬物治療、調整の方法について紹介されていたのですが、その先はゆっくり見る時間がなく残念。

 

うつ病は適切な治療、休息などによって改善する病気です。

ただ、上述のように家事は結構な負荷を伴う労働。
けれども、休職して会社から離れるように、家事からも完全に離れるというわけにはいきません。

独り暮らしの方、ご家族のいらっしゃる主婦の方などは「最低限の家事をこなす」必要に迫られ、十分に休めないことも多いのです。
また、独り暮らしの方がご実家に戻って療養するような場合も、「仕事を休んでいるのだから家事くらいはしたほうがリハビリになるんじゃない?」などと言われてしまうこともあるようです。
もちろん回復段階に応じて徐々に負荷を増やすことは大切ですが、特に療養初期はしっかり休む必要があります。

お薬はきちんと使いながら、より療養しやすい環境について考えていくことも大切ですね。

(こちらに今朝の放送内容の概要が紹介されています)

    ↓

NHKあさイチ「うつ病の薬物療法」

https://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/181031/1.html

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