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DSM-5診断名を反映しました~精神科診断について

[2019.03.16]

タイトルの「DSM-5」。いったい何だろう?と思われる方も多いかもしれませんね。 

これは、米国精神医学会が作成した診断基準である「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM)第5版のことです。←長い‼ 
1952年に初版が刊行されて以来、DSMⅡ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅳのテキスト改訂版(TR)→5と改訂が重ねられてきました。
ちなみに、バージョン5に至って急にローマ数字からアラビア数字に変更となったのにも意味があるのですが、長くなるので割愛します。
DSM-5へのバージョンアップは、Ⅳからは実に19年ぶりの大改訂ということもあって精神医学の世界では大きな話題となりました。私(院長)が医師となった当時はまだⅣでしたから……Ⅳから5へ至る期間はそれまでの改訂頻度と比較してかなり長かったことになります。この間に気分障害(うつ病・躁うつ病)について、生物学的な研究が進んだことや双極性障害の診断・治療について様々な議論がなされたこと、発達障害についても診断や治療の選択肢の拡大など大きな変遷があったことも関係あるのでしょう。 

このような久々の改訂を機に、日本語版作成にあたっても疾患名の訳語を見直そうと言うこととなり、様々な検討が重ねられました。例えば、これまでの「不安障害」や「強迫性障害」が「不安症」「強迫症」の名称となり、分類、名称共に大幅な見直しが生じた発達障害関連の項目(神経発達症群)についても診断名に大きな変化がありました。 

DSM-5が米国で刊行されたのが2013年。2014年には早くも診断名に新たな訳語を用いた日本語訳の関連書籍が発行されていますから、この3~4年で徐々にこれまでの「不安障害」や「広汎性発達障害」といった診断名がみられなくなり、不安障害に関しては「不安症」、発達障害の一部については「自閉スペクトラム症」といった名称が幅を利かせていてもおかしくないはずなのですが…実際はまだまだこれまでの名称も使われています。

これには、いくつかの理由が挙げられます。

 

※ まずは、まだ移行期間であること

※ そもそもDSM-5の日本語訳自体に、DSM-Ⅳ-TRまでの診断名も併記されていること

※ この米国精神医学会の診断基準とは別に、世界保健機関 (WHO)による「国際疾病分類」(International Classification of Diseases, ICD)も存在すること

 

こちら、ICDの方は精神疾患に特化した分類ではなく、身体疾患含むすべての疾患について網羅された分類です。公的な診断名として用いられ、統計処理にも利用されています。例えば自立支援医療や精神障害保健福祉手帳の申請に必要な診断書等ではこのICDコードの記載が義務付けられています。このICDの一部分である「精神および行動の障害」はDSMと同様に広く精神疾患の診断に用いられていますが、こちらも1992年に確定されたICD-10以降、新たな改訂に至っていません。既にICD-11は公表されていますが、今年WHOで正式に承認、その後わが国では和訳の検証やとりまとめ作業を経ての適用が予定されていますから、その動向を見てから変更という流れになるのではないでしょうか。 

 

それまでの間、当院のホームページではできるだけ新旧の診断名を併記する対応といたします。 

実は昨年末頃より、こころの病気について(一覧)や各疾患の説明ページにて、少しずつ併記への変更を進めていました。
精神科の疾患概念、診断名というのは時代の趨勢によって移り変わるものなのだということをお伝えしようと思い、このDSMやICDについてブログに書いたうえで「これから併記します」と告知するつもりだったのですが…なかなかまとめて記述する時間がなく、先にこっそり併記していました。今回ようやく、満を持して(というほどの内容ではないのですが)UPします。

 

なかなかUPできないでいる間に、季節は春へ

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