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グリーフ ~grief~

[2018.12.11]

「グリーフ」~ grief ~ とは

 大きな喪失を経験したことによる「悲嘆」を意味します。

家族や親しい友人との死別はその最たるもの。

このような喪失体験に伴って沸き起こる深い悲しみ、嘆き、苦悩、空虚感などの様々な感情は、その渦中にあるときは耐えがたいものでしょう。
けれども、そのような悲嘆の出現からいくつかの段階を経て徐々に受容に至る過程は、人間にとって自然な反応とも言えます。
「ときぐすり」という言葉がありますが、時間の経過とともに亡くなった人を偲び、祈り、思いを昇華させていくことで喪失感を自ら和らげていく力が誰にでも備わっているのです。

それでも当初は、嵐にも例えられるような激烈な喪失感、悲嘆に見舞われることが少なくありません。
特に急な死別の場合はなおさらです。

このような「グリーフ」に対し、医療や介護、福祉、さらにはお寺や教会など宗教施設などにおいてケアへの取り組みが広がっています。

 

それが「グリーフケア」です。

 

専門のグリーフケア外来や心理カウンセリングルーム、看取りにかかわるホスピスや在宅医などがご家族のケアの場を設けていることが多いようですが、精神医療の場でもグリーフを抱えた患者さんを診ることがあります。

 

ちなみに、親しい存在の死別に伴う悲嘆や抑うつは「死別反応」と呼ばれ、精神医療においては死別後の正常範囲内の反応とされてきました。
例えばうつ病の診断基準を満たすような抑うつ状態の症状がみられたとしても、それは「通常の反応」だからうつ病とは診断しないように、とされていたのです。

※ もちろん、うつ病と診断するか否かとは別として、生じている症状には適切に対応する必要があります。

 

ところが、米国精神医学会が作成した診断基準である「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM)の最新版、DSM-5においては、新たな注釈が加わっています。
「重大な喪失への反応であっても、脳の機能不全であるうつ病(大うつ病性障害)による抑うつ状態に近い状態となることがある、判別はしづらいが念のためうつ病の可能性も検討するように(大意)」という但し書きです。

これに対しては色々な見解がありますので特にコメントしませんが、「喪失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠」との文言が注釈の最後にあります。

 

喪失にまつわる苦痛、苦悩の程度は様々です。

グリーフの癒し方、乗り越え方は人によって、また文化圏によっても異なり、千差万別でしょう。

共通して言えることとして……嵐のように吹き荒れる喪失感、悲嘆をひとりで抱えないことが大切!!
家族や友人、場合によっては医療者や介護者など、喪失体験や悲しみに寄り添う姿勢の誰かの存在がいちばん大きいのではないでしょうか。

 

とあるきっかけからグリーフケアについて考える機会があり、今日はグリーフについて書いてみました。
思いのほか長くなったので、そのきっかけについては日を改めて書くことにします。

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