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クリニックと主治医の役割について思うこと

[2017.10.05]

 

クリニック開院に向けて、こころの病気についてのコンテンツを少しずつ増やしています。

「患者さんの目線で、みなさんが知りたいと思うようなことを書こう」と思いながら綴っているのですが、どこまで詳しく書くか?どのくらいのボリュームで要点をまとめるか??いつも悩んでしまいます。

 

これまで病院やクリニックで多くの患者さんとお会いしてきましたが、ご自身の診断名や治療方法について既にたくさんの知識をお持ちの方がおられる一方で、特に予備知識は持たずにまっさらな状態で説明を受ける、という方も当然ながらおられます。

 

インターネットの世界には、病気についての説明があふれています。

専門医が推敲を重ねてお書きになった、教科書代わりにしたいほどの素晴らしいサイトもあれば、情報の信頼性という点では首をかしげてしまうものもあります。

 

チェックリスト式の自己診断のようなものも見かけますが、それはあくまでも「スクリーニング(=ふるいにかけること)」。
例えばうつ病が疑われるようなときに、自己診断をきっかけに医療機関につながることとなれば、それは意味のあることかもしれません。
ただし、診断の正確性については疑問符がつくところです。

 

「そのような典型的な症状が出ているようでしたら、〇〇と診断されますね、△△で治療していきましょう」とサクッと診断、サクッと治療、というわけにはなかなかいきません。

精神症状は検査値で測ることができないうえに、社会通念や文化、家族の形態など私たちを取り巻く環境の変遷に伴い、症状の現れ方は変化します。
疾患の概念や診断基準も時代の流れとともに変遷してきたのが、精神医学の世界です。

専門家の集団が臨床的なエビデンス(根拠)を念入りに検討して作り上げた治療ガイドラインであっても、「第一選択薬は○○もしくは△△、○○が無効の場合は××……。」と、治療の選択肢は様々です。

 

それではどうやって治療方針を決めていくかというと、やはりガイドラインに基づくスタンダードな治療に、プラスアルファの「さじ加減」でしょうか。

 

「さじ加減」などと書くと、何ていい「加減」な!と思われそうですが……。

 

薬物治療や方法がある程度確立された心理療法(認知行動療法など)については、ガイドラインをなぞっていくことができますが、診察室でのやり取りにはマニュアルはありません。

また、ガイドラインに沿って治療を進めるにしても、特に薬物治療を行う場合には、予期せぬ副作用の可能性もゼロではありません。

実際に、抑うつ感や不安を和らげるためによく使われる抗うつ薬を例に挙げると、服用初期に吐き気などの胃腸症状が現れることがあります。

抑うつ感や不安が強い時には、そもそも治療開始時点で既に吐き気や食欲不振などの胃腸症状が強く現れている方もおられます。

そのような時には、抗うつ薬を服用した方がよい場合でも、薬の特徴を考えながら選択したり、早期から吐き気止めを併用したりと、個々に対応が必要なことがあります。

 

副作用だけでなく、精神的な症状の程度、身体症状の合併はあるのかどうか、患者さん本人のストレス要因やストレス負荷がかかったときの影響の現れかた、ご家族や学校、会社など患者さんを取り巻く周囲のサポート……そういった個別の状況を推し量りながら「さじ加減」をしていく。
そこがホームページに掲載する「一方通行の情報」ではお伝えしきれないところです。

 

情報量の面で言えば、書こうと思えば医学書並みに専門情報を書き連ねることもできるでしょう。
ただ、そうすると、すべての方にはあてはまらない「例外」も多くなり、誤解や混乱を招く一因となるかとも思います。

様々な情報にアクセスしやすいこと、それ自体は歓迎すべきことです。
まっさらな状態よりは、患者さん自身が抱える病状や疾患についての知識を少しでも得て治療に臨んだ方が、医師から説明を受けるにあたって治療方針への理解や病気との付き合い方が見えやすくなり、より主体的に関わっていただけると思います。

ただ、玉石混淆の情報の中から、患者さんの助けとなるような良質の情報と、不安ばかりをあおってしまうような多くの「例外」情報をどのようなスタンスでより分けるか?

そこをお手伝いできるのが、クリニックや主治医ではないかと考えます。

 

インターネット上の情報もぜひ適切に参照してもらいたい。
そのうえで、クリニックへ受診していただくからこそできること。

患者さんのご様子を対面でよく診ることで病状を把握し、的確な診断に努める。
そのうえで、その都度病状や治療の流れに応じ、対話を通じて必要な情報をお伝えする。

通い続けていただくクリニック、つながり続ける主治医ならではの役割ではないかと思っています。

 

 そのようなことを考えながら書いているため、もっと詳しく知りたいという方には物足りないかもしれませんが、

「このような症状については相談できるのだろうか?」
「○○という病気と言われたが、どのようなものなのだろう?」
などと気になった際には、どうぞ各項目をご覧になってみてください。
(準備中の項目もあり申し訳ありません。順次追加していきます。)

「さじ加減」
もともとは薬を調合するための匙

こちらは各種ハーブ&スパイスの匙

秋の夜長にハーブティーを淹れてほっと一息つく、そんな時間が持てるといいですね
スパイスの利いた食材で身体を温めるのも、秋から冬にかけての体調管理にはお勧めです

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