こころとからだ~心身一如
クリニックのコンセプト「こころとからだ」をどう調整していくか?
私(院長)の経歴に触れながら、「こころとからだ」の結びつきについて、また、クリニックで大切にしたいことをお伝えします。
私の精神科医としてのスタートは、女性外来との出会いでした。
当時、男女差を意識した医療の必要性が謳われ、我が国でも女性外来が全国的に普及してきていた時期でした。
多くの女性の診療をするなかで、女性特有の悩み(冷え、月経の問題、更年期など)に対して漢方薬がとても効果的でした。
そこで、より深く学びたいと思って漢方医へ師事し、大学病院の東洋医学外来を担当していた時期もあります。
漢方医学で重視する概念のなかに「心身一如(しんしんいちにょ)」があります。
こころとからだはつながっていて、心の不調が体の症状に影響したり、体の症状が心の不調を招いたりします。
「身体表現性障害」と呼ばれるような病気やうつ病の一部では、精神面よりも体の症状が前面に出てくることがあります。
また不安障害や、適応障害などストレス性の病気でも、様々な自律神経症状(頭痛、めまい、息苦しさなど)を伴うことがあります。
体の症状だけに着目していてはなかなか改善しない場合もありますし、逆に体の症状が楽になってくると心の面の回復が早まることもあります。
心(精神・心理面の症状)と体(身体面の異常や症状への対応)、加えて環境(家族・学校・会社など患者さんを取り巻く周囲)の調整は、精神科治療の三本柱です。
もちろん、女性外来だけではなくこれまで勤務した医療機関では当たり前のこととして男性患者さんも診察してきましたが、初めに培った男女の違い(性差)を意識した診療と、個別性を大切にする漢方診療の経験はとても役立ちました。
例えば女性の場合、家庭の事情からくる悩みが病気の発症や経過に大きく影響することがありますが、男性の患者さんでは、仕事、退職など社会的な事柄に左右されやすいといった違いがあります(もちろん、多くの女性が男性同様に社会で働く現代ではこの限りではありませんが、傾向としてはみられます)。
「性差」を意識することは、ひいては「年齢、世代による違い」「個々の違い」を大切にすること。
老若男女を問わず、目の前の患者さんとお話ししながら、
「この方は何にお困りなのだろう?」
「どんなお手伝いができるだろう?」
と、おひとりおひとりの困りごとを吟味して対応を考える。
これを今後もクリニックの診療のうえでの柱としていくつもりです。